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外国人社員とうまく働くために大切なこと
「なぜ伝わらないのか」と悩んでいませんか。文化や価値観の違いによるすれ違いを理解し、日々の小さな工夫で信頼関係を築くヒントを、日本で外国人向け研修を行う研修講師の視点も交えてご紹介します。
外国人社員とうまく働くために大切なこと
「一生懸命教えているのに、なぜか伝わらない」「こちらの意図を理解してもらえない」と感じる瞬間はありませんか。特に、外国籍の社員と仕事を進める中で、そうした戸惑いに直面する機会は決して少なくありません。日本でのビジネスマナーや職場文化に慣れていない外国人社員に対して、誤解やすれ違いが生じるのは自然なことです。しかし、その背景にある要因を知り、小さな工夫を積み重ねることで、信頼関係を築くことは十分に可能です。本記事では、これまで外国人社員向けに日本のコミュニケーションやビジネスマナー研修を行ってきた講師の知見を交えながら、現場での悩みを取り上げ、解決の糸口を探っていきます。
どうして伝わらないのか 現場でよくある戸惑いの声
意図が伝わらない、指示が通じないという不安
ある日本人社員は、新しく配属された外国人社員に業務の流れを丁寧に説明したつもりだったにもかかわらず、翌日になると全く違う方法で作業が進められていて驚いたと言います。「きっと日本語がうまく理解できていないのだろう」と考えがちですが、実際には言葉だけでなく、前提としている仕事の進め方や優先順位のつけ方そのものが異なっているケースが多いのです。
また、ある部署では、外国人社員が始業時間ぴったりに出社することに対して違和感を抱く声がありました。「他の社員は10分前には席について準備しているのに、自分だけギリギリに来るのは協調性がないのでは」と感じる人もいます。しかし、外国人社員にとっては「始業時間に間に合えば問題ない」という認識が当たり前であり、それが職場のルールに反しているとは思っていないのです。
「なぜ謝らないのか?」の背景にある価値観
業務上のミスが発生した際、「まずは謝罪する」という習慣を当然と捉えている日本人にとって、外国人社員が謝らずに説明を続ける姿勢に対して「反省していない」と感じてしまうことがあります。しかし、文化によっては、謝罪することで自分の責任を全面的に認めることを意味し、場合によっては立場を危うくする行為と捉えられることもあります。こうした価値観の違いが、誤解を生む原因となっているのです。
背景にある文化や価値観の違いを知ることから始めよう
「常識」の基準は国によって異なる
日本のビジネス環境では、空気を読む力や相手の立場を慮る姿勢、控えめな表現などが重視されますが、必ずしもそれが国際的に通用する「常識」とは限りません。たとえば、欧米の一部では、自己主張を明確にすることが信頼を示す行為とされ、遠慮や曖昧な表現は「自信がない」「責任を取らない」という印象を与えることもあります。つまり、同じ言葉を用いていても、その背後にある意図や受け取り方が大きく異なる可能性があるのです。
ここで、いくつかの文化背景による行動の違いを比較してみましょう。
| 行動・習慣 | 日本の職場文化 | 一部の外国人社員の文化 |
|---|---|---|
| 始業時間への対応 | 10分前出社が望ましい | 定刻ちょうどに出社 |
| 業務中の休憩 | 上司の許可や空気を読む | 自己判断で頻繁に小休憩 |
| ミスへの対応 | まず謝罪し、反省の意思を示す | 事情説明を優先。謝罪は必要ないと考える場合も |
| 報告・連絡・相談(ホウレンソウ) | 逐一報告・相談が求められる | 自律的に判断してから結果のみ伝える |
「違い」を知ることで見えてくる共通点
文化や価値観の違いは、しばしば「壁」として捉えられがちですが、本来は互いに学び合うきっかけにもなります。たとえば、自己主張が強いとされる外国人社員が、自分の意見を職場で率直に述べる理由には、単に「自己主張したい」というよりも、「より良い方法があると信じているから」という前向きな意図があることが多いのです。このように、相手の行動の背後にある価値観や動機を理解することで、対話の糸口が見えてくる場面は少なくありません。
研修講師の立場から見ると、多様な文化背景を持つ社員同士が互いに歩み寄るためには、「相手の文化を知る努力」と「自文化を説明する力」の両方が必要だと言われます。つまり、ただ外国人社員に「日本のやり方を覚えてもらう」のではなく、日本人社員もまた、「なぜ自分たちはそうしているのか」を説明できるようになることが、真の相互理解への第一歩なのです。
気づかぬうちに日本人側がしている「前提の押しつけ」
言葉の奥にある「空気を読む」文化
ある教育担当者は、外国人社員に仕事を任せた際、「これ、お願いしてもいい?」と依頼したところ、「あ、できません」と即答されて驚いたと語っています。この場面、日本人同士であれば「お願いしてもいい?」が実質的に「やってください」という意味だと理解されることが多いですが、直訳的に捉える外国人社員にとっては、「断ってもよい」と受け取られるのです。このように、曖昧な表現や間接的な依頼が、かえって混乱を招くことがあります。
さらに、「上司の意図を察して行動する」ことが評価される文化も、外国人社員にとっては難解です。明文化されていない期待やルールが多い職場では、何か問題が起きたときに、「なぜ気づかなかったのか」と責められることがありますが、そもそも察するという文化的スキルは、学習によってすぐに身につくものではありません。むしろ、「こういう場合はこう対応してほしい」と明確に伝えることが、相手との信頼構築につながるのです。
「日本ではこうするもの」という無意識の期待
配属後すぐに現場で起きるトラブルの多くは、日本人側の「常識」が無意識に前提として押し付けられていることに起因しています。たとえば、「新人ならまずは雑務から」「目上の人には敬語を使う」「何をするにも上司に確認する」といった職場の慣習は、日本人社員にとっては当たり前のことですが、文化的背景が異なる人にとっては、理不尽に感じられることさえあります。
研修現場では、「入社したら、あとは現場で覚えてもらう」という考え方が根強く残っていることに課題を感じるという声もあります。外国人社員にとっては、入社がスタートであり、学びの入り口であるにもかかわらず、実際の現場では「もう一人前として扱われている」と感じて戸惑うことが少なくありません。日本の職場に馴染むには時間と支援が必要であり、それを前提にした関わり方が求められます。
このように、自分たちの「当たり前」を見直し、相手の立場に立って考えることが、外国人社員との円滑な協働の鍵となります。そして、文化や言葉の違いを超えて、共に働く仲間としての信頼を築いていくことが、これからの多様性社会における大きなテーマとなっていくのです。
今日からできる 小さな工夫でコミュニケーションは変わる
「違い」への気づきが第一歩
日々の業務の中で感じるちょっとした違和感やすれ違い。それは、文化や価値観の違いから生まれていることが少なくありません。日本の職場においては、暗黙の了解や空気を読むといった非言語的なコミュニケーションが重視されがちです。しかし、それが通用しない場面が増えてきた今、小さな気づきと工夫が大きな変化を生む鍵となります。
例えば、始業時間に関して「ぴったりに来る」ことを不真面目と捉える風潮がある一方で、ある国では「ぴったりに来る」ことがプロフェッショナルであるという認識が根付いています。このような価値観の違いを単なる「非常識」と片付けるのではなく、「なぜそういう行動をするのか」という背景に目を向けることで、相手を理解する姿勢が育まれます。日常の中にある小さな工夫が、信頼関係の第一歩になるのです。
言葉の奥にある思いをくみ取る
言語の壁は、外国人社員とのコミュニケーションにおける大きな課題の一つです。「日本語が理解できていないのか、それとも内容自体を理解できていないのか」と感じる場面は少なくありません。このような時、単に語彙の問題と捉えるのではなく、相手の反応や表情、態度から理解度を探る繊細な姿勢が求められます。
また、指示を出すときには、曖昧な表現を避け、具体的に伝えることが効果的です。「この資料、なるべく早めにお願い」と伝えるよりも、「この資料は明日の10時までに仕上げてください」と明確に伝えることで、無用な混乱を防ぐことができます。こうした言葉の使い方一つで、誤解やすれ違いを大幅に減らすことができるのです。
「謝らない」という行動に込められた文化的意味
多くの日本人社員が戸惑う場面の一つが、外国人社員がミスをしても謝罪をしないというケースです。「なぜ謝らないのか」「反省していないのでは」と感じることもあるでしょう。しかしこれも、文化的背景に根ざした行動である可能性があります。
例えば、ある文化圏では「謝罪=責任の全面的な受容」と捉えられ、軽々しく謝罪することが避けられます。こうした文化では、謝罪よりも「次にどう改善するか」を重視する傾向が強いため、日本的な「とりあえず一言謝る」という習慣が根付いていないのです。相手の文化の価値観に寄り添いながら、「日本の職場ではどういうふうに伝えると良いか」を丁寧に共有していくことが、相互理解の第一歩になります。
文化的背景による行動の違いとその理解
| 行動 | 日本の職場での受け止め方 | 外国人社員の背景要因 |
|---|---|---|
| 始業時間ぴったりに出社 | ギリギリで余裕がない、不真面目に見える | 時間厳守の文化だが、効率重視で待機時間を避ける傾向 |
| 謝らない | 責任を取らない、反省していないように感じる | 謝罪は重大な責任認定と捉え、慎重になる文化もある |
| 頻繁な休憩 | 怠けている、集中力がないように見える | 短時間で効率的な業務を行う文化で、定期的なリフレッシュを推奨 |
「入社がゴール」にならないために
外国人社員に限らず、新入社員全般に見られる傾向として「入社がゴール」になってしまうケースがあります。特に外国から来た社員にとっては、日本での就職が一つの大きな目標であり、そこに達したことで一種の達成感を覚えるのは自然なことです。しかし、企業としてはそこからが本番です。業務にどう向き合っていくか、どのように戦力として育てていくかが求められます。
そのためには、期待値の共有が非常に重要です。「何をいつまでにどのようにやってほしいのか」「どのような姿勢が評価されるのか」といった具体的な指標を、配属直後から丁寧に伝えていく必要があります。言葉だけでなく、実際の行動やロールモデルを通して示すことが、理解を深める上で効果的です。
違いを力に変えるために大切なこと
「違い」を否定せず、活かす視点を持つ
文化や価値観の違いに直面したとき、私たちはつい「自分の常識」と照らし合わせて相手を評価しがちです。しかし、その違い自体がチームにとっての新しい可能性であるという視点を持つことが、これからの職場には欠かせません。多様な視点は、時に衝突を生むかもしれませんが、それ以上に創造性や柔軟性を育む源となります。
例えば、「こまめに休憩を取る」という行動は、集中力の低下と捉えられがちですが、実は自分の体調やパフォーマンスを管理しながら効率的に働くという意識の表れでもあります。このような視点を共有することで、チーム全体の働き方を見直す機会にもつながるのです。
共通の目的に向かって歩むための土台づくり
価値観や文化が異なる者同士が同じ職場で働くうえで、最も重要なのは「共通の目的を持つこと」です。何のためにこの仕事をしているのか、どのようなゴールを目指しているのかを明確にすることによって、個々の違いが障害ではなく、補完し合う力となります。
この共通目的を共有するためには、日常的なミーティングや1on1での対話の積み重ねが欠かせません。「何かあったら相談して」と口にするだけではなく、実際に相談しやすい雰囲気を作ること、そして相談があったときにしっかり耳を傾けることが信頼関係の構築につながります。
「育成」は一方通行ではない
新入社員の育成というと、どうしても「教える側」と「教えられる側」という構図になりがちです。しかし異文化の中では、その関係性も相対的です。外国人社員が持つ知識や経験、母国での働き方などから学べることも多く、一方的な指導ではなく「共に学ぶ」という姿勢が、多様性を受け入れる職場文化を育てていきます。
実際、外国人社員との対話の中で、こちらが気づかされることも少なくありません。「なぜこのやり方をしているのか?」と問われることで、当たり前と思っていた業務プロセスを見直すきっかけになることもあります。こうした相互作用を通じて、企業全体の柔軟性や適応力が高まっていくのです。
「違い」を超えて築かれる信頼
最終的に、文化の違いを乗り越える鍵は「信頼関係」です。どれほど制度や仕組みを整えても、信頼がなければ本音のコミュニケーションは生まれません。信頼は、日々の小さなやり取りの積み重ねから生まれます。挨拶一つ、感謝の言葉一つが、相手の心に届くかどうかで、関係性は大きく変わっていきます。
多様な価値観を持つ仲間と働くことは、決して楽なことではありません。しかし、大変だからこそ得られる成長があり、そのプロセスを乗り越えた先には、より強固で柔軟なチームが築かれていきます。一人ひとりの姿勢と工夫が、組織全体の未来をつくっていくのです。
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